《職場の教養に学ぶ》
お題:食卓から育む絆
2026年6月7日(日曜)
【今日の心がけ】食事の時間を大切にしましょう
砂川昇建の思うところ
曹洞宗の食に対する思想を語るうえで欠かせないのが、典座教訓です。これは鎌倉時代に道元が著した、寺院の料理責任者(典座)への教えをまとめた書物です。現代では食事は「栄養補給」や「楽しみ」として語られがちですが、道元はさらに深い視点から食を見ていました。料理そのものが修行である。典座教訓で最も有名な考え方です。道元は、坐禅だけが修行なのではなく、米を研ぐ、野菜を洗う、火を起こす、味を整える、こうした一つひとつの行為が、そのまま仏道の実践であると説きました。中国で出会った老典座と道元禅師の有名なエピソードがあります。典座教訓のきっかけになった話です。若き日の道元が中国(南宋)へ渡ったときのこと。ある夏の日、港で高齢の典座(料理長)が、炎天下にもかかわらず椎茸を干していました。道元は、「弟子にやらせればよいのではありませんか」「仏道の話をしませんか」と尋ねます。すると老典座は、「他は是れ吾にあらず(他人は私ではない)」「更に何れの時をか待たん(今やらずしていつやるのか)」と答えました。さらに、「こんな暑い日にしなくても」という道元の言葉に、「日本から来た若い修行者よ、あなたはまだ修行というものが分かっていない」と返したと伝えられます。この言葉に道元は強い衝撃を受けました。修行とは誰かに代わってもらうものではなく、今、この場で自分が行うことだと悟ったのです。禅寺では食事前に「五観の偈」を唱えることがよくあります。内容は次の五つです。第一観、この食事がどのような苦労によってここに来たかを考える。農家、運搬、調理など、多くの人の働きを思う。第二観、自分はこの食事を受けるに値する行いをしているか省みる。慢心を戒める。第三観、貪りや怒りや愚かさを離れる。欲望のままに食べない。第四観、この食事を良薬として受ける。快楽のためだけでなく、身体を養うためにいただく。第五観、仏道を成就するためにこの食事をいただく。生きる目的を忘れない。現代社会は、飽食の時代ですが、せめて、食べ物を残さないようにしましょう。
著者 砂川昇建




