《職場の教養に学ぶ》
お題:故郷で過ごす時間
2026年1月26日(月曜)
【今日の心がけ】家族との時間を大切にしましょう
砂川昇建の思うところ
「田舎は遠きにありて思ふもの」という言葉が胸に残るのは、そこに人間の記憶と時間の性質が凝縮されているからかも知れません。遠ければ遠いほど愛しくなる――それは距離そのものよりも、距離が生む「編集」の作用だと思います。離れているあいだに、故郷は少しずつ現実の手触りを失い、代わりに守られていた感覚、名前を呼ばれていた記憶、何者でもなくてよかった時間だけが、磨かれて残る。嫌だったことや息苦しさは風化し、「自分がまだ世界に試されていなかった場所」として、心の奥に保存されていくのかも知れません。人はなぜ鮭のように故郷へ回帰したくなるのでしょうか?鮭が川を遡上するのは本能ですが、人間の場合はもう少し複雑で、しかし同じ方向を向いています。人は生きるほどに、役割が増え、名前が増え、評価される軸が増えていく、その過程で、「ただ存在していただけで許されていた場所」を、無意識に探し続けます。故郷とは多くの場合、自分が「証明」を求められなかった最後の場所なのです。だから疲れたとき、迷ったとき、人は原点へと心を戻したくなる。それは逃避ではなく、再起動に近いのかも知れません。もし故郷が常に近くにあったなら、そこはただの「日常」であり、 郷愁は生まれません。遠さは、時間を圧縮し、感情を濃縮し、失われたものを“意味”に変える装置です。だからこそ、「帰りたい」と思い続けられる距離にあるほうが、故郷は美しく、優しく、愛しいのかも知れません。人も鮭も、戻ることで過去に帰りたいのではなく、もう一度「進むための力」を得たいのかも知れませんね。
著者 砂川昇建




